介護現場における生産性向上とは
- 一般的に「生産性」とは製造業等で用いられるOutput(成果)を Input(投入量)で除した「労働生産性」を指します。さらに「労働生産性」とは単位投入量(1人もしくは1時間)当たりの付加価値額を示す「付加価値生産性」、もしくは単位投入量当たりの生産量を示す「物的生産性」に大別されます。
- 一方、介護分野における「生産性」を考える場合には、介護分野の人が人にケアを提供するといった特性(製造業等との違い)を十分に考慮する必要があります。介護現場の生産性向上は「利用者に質の高いケアを届ける」という介護現場の価値を重視し、介護サービスの生産性向上を「介護の価値を高めること」と定義(「介護サービスにおける生産性向上のとらえ方」_生産性向上ガイドライン)しています。
- また、生産性向上の取組を通じて利用者に質の高いケアを届けることは、利用者のみならずその家族や関係者にも価値を提供することに繋がります。生産性向上ガイドラインにおいては、介護における生産性向上の取組の上位目的を「介護サービスの質の向上」と「人材の確保・定着」としています。
- 人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するためには、介護サービス事業所の課題を明確にし、業務改善活動等に継続的に取り組む必要があります。そして、これらを通じて職員の働きがいや仕事に対する満足度を高め、その結果として更なるサービスの質の向上につながります。この一連の流れがまさに介護分野における「生産性向上」に取り組む目的です。
5Sとは
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底・繰り返しにより、組織の業務プロセスとして習慣化することが重要。
要素 | 概要 | 介護現場における事例 |
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整理 | 要るものと要らないものをはっきり分けて、要ら ないものを捨てる | 保存年限が超えている書類を捨てる |
整頓 | 三定(定置・定品・定量) 手元化(探す手間を省く | 紙オムツを決まった棚に収納し (定置・定品)、 棚には常に5個 (定量)あるような状態を維持し、 取り出しやすく配置する(手元化) |
清掃 | すぐ使えるように常に点検する | 転倒防止のために常に動線上を きれいにし、水滴などで滑らないようにする |
清潔 | 整理・整頓・清掃(3S)を維持する 清潔と不潔を分ける | 3Sが実行できているかチェックリストで確認する 使用済みオムツを素手で触らない |
躾 | 決められたことを、いつも正しく 守る習慣をつける | 分からないことがあったとき、OJTの仕組みの中で トレーナーに尋ねることや手順書に立ち返る癖をつ ける |
3Mとは
要素 | 概要 | 介護現場における事例 |
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ムリ | 設備や人材の心身への過度の負担 | ・キャリアの浅い職員がいきなり一人で夜勤になる ・体重80kgの男性利用者のポータ ブル移乗を女性の介護職員1人で 対応する |
ムラ | 省力化できる業務 | ・利用者を自宅に送った後、忘れ物に気づき、もう一度自宅に届ける ・バイタルなどの記録を何度も転記 している |
ムダ | 人・仕事量の負荷のばらつき | ・手順通りに作業する職員と自己流で作業する職員、状態に応じて介助する職員がいる ・曜日によって、夕食の食事介助の介護スタッフ数がばらつき、食事対応に差が生じる ・介護記録の研修もなく、記載の仕方が職員によってマチマチで正確に情報共有がなされない |